キュン。
50. その他 2016年10月18日 火曜日 0:19:57それは、昔の愛犬。
近所のひとが何匹か連れてきて、その中から一番ひ弱な子を選んで引き取った。
自分が遊びから帰ったらすでに居て、名前も「キュン」に決まってた。
ほんとにひ弱で、気弱で、しばらく懐かず怯えていた。
だんだん慣れてきて、玄関をガラガラとあけると、尻尾を振って喜ぶようになった。
父親は犬小屋は作ってくれたが、
土を掘り返すから、と、すぐにまわりをコンクリで固め、
鎖も短くされた。
犬は基本的にその家の、男、特に家長を主人とみなす。
しかしキュンは明らかに自分を主人とみてくれてた。
実際散歩は日に二回、朝晩毎日連れてった。
キュンはなにより、あの家において、自分にとって癒しだった。
姉もそうだったろう。
ふたりとも、なんともなしに、キュンのもとにいき、遊んだ。
それに、短い鎖でつながれ、夏は暑いコンクリで固められ、
犬の本能的な行動である土を掘ることすら禁じられたキュンを大事にしたくて、
散歩の時は、家の前の急な坂を、
キュンが目一杯走れるように、一緒にダッシュした、キュンの方が速かったけれど、それでも全力で毎日走った。
公園で、誰も居ないことがあると、ひもを手放して、思い切り走り回らせたり、した。
ドリフトするくらい嬉しそうにずっとずっと駆け回ってた。
思えばキュンも、あの家で、閉じ込められいろんなことを禁じられてた。
幼少の頃はそこまで明確に考えてなかったけど、なんとなく、
散歩の時はできるだけ、走れるように、時にはゆっくりにおいを嗅がせるように、キュンにあわせた。
もし、キュンがいなければ、
おそらく、自分も姉も、もっと小さな頃からおかしくなってたと、
思う。
大学の時家から離れて、
時々帰ると、もうあまり走れないのに、
昔のように散歩の時はキュンは走ろうとしてくれた。
こいつ、なんて可愛いんだ、って思った。
Instagramなどで、ワンコの写真を見てて、ふと、キュンを思い出した。